2011/12/31

皆様、よいお年を

今年も、いよいよ大詰めを迎えました。

今年は震災、円高など、日本にとって多くの困難がありました。経済が混迷し、デフレが加速しても、今失っては取り戻せない文化や技術があります。
ものをただ安く売るのではなく、ものと同時にものづくりを、すばらしい想いを次代に引き継ぐことができたならば、これからのよりよい時代のヒントとなるのではないかと思います。

2011年、皆様には、多大のご愛顧をいただきまして、大変感謝しております。
来年は更なる努力と研鑽を重ね、尽力して参ります。
2012年も何卒よろしくお願い申し上げます。

よいお年を。

サルトリア・イプシロン一同



2011/12/30

All About 掲載

寒い日が続いており、本年もあと少しですね。
この度、生活総合情報を発信しているサイト「All About」で、サルトリア・イプシロンをご紹介いただきました。
色々なテーラーさんや大人のメンズ服情報を発信し続けていらっしゃる倉野路凡氏のガイドです!。

倉野様、取材の際は日本橋と銀座と来ていただき、ありがとうございました。
※2014年8月より新たに店舗が移りました。

下にリンクを貼っておりますので、是非皆様も御覧くださいませ。

All About


2011/12/25

船橋幸彦 服の流儀 パンツ

船橋が考える理想のパンツについて。

流行により太さは異なりますが、ウエスト後ろ背骨中心の位置に密着感があり、前身後身が太ももに触れないように落ちるのが理想です。 
それから足を左右と踏み出し、前身センターラインが膝頭の中心を通りつま先に落ちているかを確認する。(但し私もそうですが、蟹股の方は膝頭中心ではなく、内側に通したほうがまっすぐに見えます。) 

そして、後ろ身は垂れジワがないか注意する。
後ろの垂れジワは本人には気付きにくいので要注意です。
体からパンツが離れているので動きによってはつっぱり、ストレスを感じ垂れた分足が短く見えるからです。

 参考までに。



スタッフの着古したパンツで失礼いたします。


2011/12/07

Ypsilon New Cravatta

サルトリア・イプシロンオリジナルの秋冬の新作ネクタイが出来上がって参りました。

ソリッドとペイズリーの2種類です。
ソリッドは全4色、ペイズリーは1色のみの展開です。


<ペイズリー柄 ネイビー×ワイン> 

縦糸がネイビー、横糸がワインですので、角度によって色味が変化します。光沢感と柄のちょうど良い大きさとも相まって、すごくエレガントなネクタイです。紺系のスーツに抜群によく合います。






<ソリッドタイ ワイン・ネイビー・ブラウン・グレー>

ソリッドの方は、横糸に紺を使っています。ワインやグレーは角度によっての色味の変化が著しく分かります。

肉厚で柔らかい生地なので、絞めた時のフワッとした雰囲気がなんともいえません。


すべて
全長150cm・大剣幅9cm・小剣幅4.5cm
¥12,000(税抜)
本数がかなり少ないので、お考えの方はお早めに


2011/11/30

サルトリアイプシロン パンツのオーダー

サルトリアイプシロンでは、パンツ単品でもご注文をお受けしております。


全て、仮縫いを含むフルオーダーですので、履いていただいた時のシルエットが違います。
また、ポケットやボタン有無の仕様等も当然お選びいただけます。

生地は、ウール、コットンを中心に(チノ、コーデュロイ、ツイル)など替えパンツ、きれいめのカジュアルスタイルにも使える生地を幅広く御用意しております。

他店と比べての違いは、やはり型紙(=シルエット)とその扱い(=補正)の点ですが、それは後日説明させていただきます。



2011/11/26

H.Lesser&sons

新たに生地を8点入荷いたしました。それぞれ在庫分限りです。



Lumb's Huddersfield Golden bale   for  H.LESSER & SONS
Made in England.
1.Navy × Blue striped
2.Glencheck  × Blue windowpane

おそらく重さ280gmsのスリ-シーズンに、100%Woolにしてとてもしなやかで自然な光沢があります。Golden baleゆえ、通常バンチでは扱われない生地です。濃紺にブルーストライプと、グレンチェックにブルーのウインドペーンの2点です。


"Solway" by Porter & Harding     Made in Scotland

3.Brown glencheck
4. Glencheck  
おそらく310gms前後、秋よりの合物です 。よりクラシックなスーツを求めるならば、とても相性のよい生地です。きめ過ぎず普段着としてスーツを着られる方へ。   

5.“Oyster” by Harrisons     Made in Haddersfield England

おそらく350gms前後の冬物スーツ地です。クラシックな色柄で、しっかりとした厚みがあり、永く愛用していただける一着になるはずです。



6."H.lesser & sons"    Navy Flannel     Made in England
400gmsあるヘビーな生地ですが、ガシガシし過ぎずしなやかさもあります。紺無地フランネルのブレザーとして毎年着込んでいくのに最適な生地です。

7. " Moonbeam " by Harrisons     Made in Scotland
   Wool    &     Angora

。おそらく350gms前後の、水色のメリンジ調に青のウインドペーンのジャケット地です。 アンゴラウサギの毛が混ざりとてもやわらかな手触りです 。ウールだけのものに比べ、高級感のある逸品です。

8.ミミナシ  Made in Japan
これは、国産であることは確かですが、サンプルづくり用に買ったものでミミがありません。ですが、悪くない濃紺具合の色柄と、何より触ったときにコシとある生地です。色柄さえ気にいただけた方なら、スーツにもジャケットにもつかえ重宝するはずです。

是非、お気軽に店頭で御覧くださいませ。


2011/10/27

仕立て屋が作るオーダーメイドシャツ「作り」3

夏のスーパークールビズも終わり、やっとジャケットを羽織れる季節になりましたね。
秋になったにもかかわらず、イプシロンシャツをご注文いただいているお客様、誠にありがとうございます。 
久々の更新となってしまいましたが、 今回は、仕立て屋が作るオーダーメイドシャツ「作り」についてPart3として、手縫いの味についてご説明させていただきます。

早速ですが、なぜ弊社ではシャツを手で縫うのかを申し上げます。
ミシンで仕上げたシャツと手で仕上げたシャツでは、出来上がった服の表情(印象)が全く異なるからです。 一般的に販売されているミシンで縫われたシャツは、ほぼ100%といっていいほど高速ミシンで次から次へと縫い合わされていきます。

今アパレル市場(工場) では、価格競争の影響でより短い時間でより多くの服を製造しなければならない状況へと追い込まれています。

そのため工場では常に時間との戦いですから、どれだけ効率よく、より短い時間で一着の服を縫い上げられるかという考えから、服を作っています。(なのでどうしても工場では工程を分担したライン作業となってしまうわけです)

そうして縫われたシャツをアイロンと糊でかっちりプレスし綺麗に箱づめしているわけですが、私にはそうして作られた皺(しわ)一つないシャツが逆にキレイ過ぎて不自然に感じてしまいます。

※別に既製服、工場で縫われた服を否定しているわけでは全くございません。一個人としての考え、思いをただ書かせていただきました。(ご気分を悪くされた方、大変申し訳ございません)

前回も申し上げたように、イプシロンのシャツいい意味で新品の状態でも古着っぽく、身体になじみやすいのが特徴ですので、既製服とは全く作っている「視点」が違います。
弊社の服は、ハンガーにかかっている時、たたんで置かれている時、いかに綺麗に皺無く、きっちりと見えるかではなく、実際に服をお客様がお召しになられた時に、どれだけ身体になじみ、着やすく、自然で、雰囲気がでるかをイメージして服を作っています。
そういった意味では、服づくりの考え方だけでなく、どういったものが綺麗でエレガントなのかという見た目での視点も、他とは異なるかもしれません

っと、文章を書いているとすぐ話しがずれてしまいますので、本題に戻りたいと思います。 イプシロンのシャツは衿内側、カフスの内側、アームホールの縫い代のとめ、ボタンホール、ボタン付け、剣ボロの閂(カンヌキ)と内側縫い代の隠し、ガゼットを手で縫っています。


まず、こちらが衿内側、カフス内側のまつりです。



一般的なシャツはミシンで表生地、芯、縫い代、内側の生地を一緒に縫ってとめます。 ですがそうしてしまうと、表からステッチをいれますので、どうしてもミシンで縫っているうちに内側の生地が縫いずれてくるのです。
また、縫い目が固くなってしまうのも手で縫う理由です。

次にアームホールのまつりです。



よく雑誌等では手でまつったアームホールの着心地はバツグンに良いなど言われていますが、縫い代をまつっているので基本的に着心地はミシンで縫っても、手で縫ってもほぼ変わりません。(アームホールと身頃を手で地縫いした場合は着心地は変わるかもしれませんが


ただ、アームホールを手でまつると着たときの袖の雰囲気はミシンで縫ったものと比べて全く違います。ふわっとした印象です。
手縫いとミシン縫いのシャツ2枚を並べてぱっと見比べただけでも、全く違う印象だということが分かっていただけると思います。(店にはサンプルもございますので是非一度スタッフまでお申し付け下さいませ)

続いてボタンホールとボタン付けです。
まずこちらが機械のボタンホール。


そしてこちらが手縫いのボタンホール。



違いがお分かりになりましたでしょうか? 
シャツのホールはジャケットのホールのように中に穴芯を入れたりはしませんので、違いが分かりづらいかもしれません。
ただ手でかがったホールはより立体感があり ソフトな印象だということは確かでしょう。
最近のシャツ専用のボタンホール機は、わりと細めで綺麗にかがれるようなので、このあたりは本当にマニアックな 違いになってくるかと思います。

続いてこちらが機械のボタン付け。


そしてこちらが、手でつけたボタン。


足があるか、ないかの違いだけなのですが、これだけでボタンをかける際の「かけ心地」が全く違ってきます。足があると驚くほどストレス無くボタンを付けはずしすることが出来ます。

最後に剣ボロとガゼットです。
剣ボロは内側の下ボロの縫い代を隠し、それをまつっています。このほうが折り返したときに綺麗に見えるためです。
そして上からカンヌキ止めをします。補強の意味もありますが、見た目の飾りとしても、とても良い雰囲気です。

ガゼットも手でまつります。


ワークシャツなどは脇を縫う時にミシンで一緒に縫い込みますので補強の意味合いが強いですが、ドレスシャツの場合は補強というよりも、縫い代のぼろを隠すためにつけます。
 ここも手で縫うのは、ミシンよりも雰囲気がよくなるためです。
このようにシャツを手で縫うということはそれぞれに意味がある訳ですが、一番のメリットとしてはやはり服に表情、雰囲気がでるということです。ただしデメリットとしてはどうしてもミシンで縫ったものと比べると強度が弱いということです。

ただ、強度が弱いだけですので、生地さえすりきれなければ何度でも修理が可能です。
代表船橋の長くからお付き合いのあるお客様はイプシロンシャツを10年以上着てくださっています。服は大事に扱っていただければちゃんと長持ちするものです。



2011/10/06

アルスターコート

現在、サルトリアイプシロンではコートオーダー会を開催しております。
人体サンプルには、今回新たにつくった、クラシックなアルスターコートを着せております。

※アルスターコートとは、アイルランドのアルスター産の生地でつくられたものを発祥とする、“アルスターカラー”のついたコートを指します。

胴衣は、フラップ付きの切りポケットだったり、長いベルトなど色々なデザインがあるようです。衿の形違いでポロコートなどもありますが、我々のコートは、イタリア式のアルスターコートです。



凛々しい雰囲気のアルスターカラー。
段返りの6釦です。


特徴的なポケット。(ポストポケット)



ターンナップカフス




背中心はインバーテッドプリーツに釦付きのセンターベンツです。

今回のサンプルでは茶のヘリンボーンツイードを使用していますが、カシミアやキャメル色のウール100%のコート地もお取り扱いしております。

コートをお考えの方は、この機会に是非ご覧下さいませ。

2011/10/01

着たときのシルエット


注文服は、その人が着てはじめてシルエットが現れる。



代表、船橋幸彦(工房内にて背景のお見苦しい点はお許し下さい)


トータルコーディネート全てサルトリアイプシロンのものです。


注文服とは人が着たとき、動いたときに初めていきいきと目を覚まします。

それは、その各人に合わせるシルエットでつくられているからです。

イタリア(イプシロン)の服は、軽いです。

同時に、立体的に構築されたシルエットを大切にします。
ですが、そのシルエットをつくる為にバリバリに堅い芯や、のりなどは一切使いません。芯地はぺらぺらの軽いものを使っています。だからこそ高度な技術が必要だと、船橋はいいます。

軽いが、軽く見えないシルエット。

それが、サルトリアイプシロンの服です。



2011/09/25

手縫いのボタンホール

先日お客様より釦ホールを直してくれないか?
というご依頼をうけました。



こちらがその釦ホールです。

釦をかけたり、はずしたりしているうちにホールの糸がほつれてしまったようです。
お客様のジャケットは約11年前、まだサルトリアイプシロンがミラノにあったころお仕立てしたものです。
もちろん、まだまだ現役でお召しいただいているものでございます。

こういった修理の依頼をうけるのは弊社としても大変うれしいことでございます。
丁寧に一針一針縫い上げた服が実際にお客様の手にわたり、大事に着てくださり、こうして戻ってくることは、仕立て屋としての理想です。

今の社会の流れのように、安い服を買っては捨て、買っては捨てを繰り返すよりも、一着の服を、長く大切に着るということはある意味、経済的であり、エコであり、なにより一着の服に対して愛着が沸いてくるものです。

人にはそれぞれの考え方、価値観がありますから、一概に良し悪しを私が言うことはできませんが、高い値段でスーツをオーダーすることは、決して贅沢なことではないように感じます。


話がずれましたので本題に戻りたいと思います。
まず、ほつれてしまった糸は元には戻りませんので、一度全部といてしまいます。


 その後もう一度かがり直せば、新しいホールへと生まれ変わります。



釦ホールをかがる糸は基本シルクですし、釦付け糸はコットン、その他弊社では基本的に糸等、附属はすべて天然のものを使用します。



先日、別のお客様で、ジャケット脇のパッチポケットのステッチ糸が外れてきてしまったから直してほしいと言うご依頼を受けました。また、釦が外れてしまったなどご連絡を頂くこともございます。

ですがそれでいいのです。(不良品なわけではございません!) また縫い直せばいい訳ですから。化学繊維の糸を使えば、確かに天然のものに比べほつれにくくなりますが、そうしてしまうと、今度は逆に糸の強度が強すぎて生地が切れてしまいます。

天然繊維の生地にはやはり天然繊維の糸で縫い上げるのが一番自然です。
それに服になったときの馴染み雰囲気が化学繊維のものに比べ違ってきます。
天然の素材は、使い込むことで歳をとりますので、弱くなってくるものです。
そうして不具合が生じてきた場合は、いつでも弊社へご連絡、もしくはお持ち下さい。

いつでも修理、メンテナンスいたします。



2011/09/04

よりクラシックを求めるならば…

今回、よりクラッシックなものを求めている方に、年代物の生地について。

現在、生地の生産地である欧州においても、ドライスピニング(紡績)、高速織機が一般的であることはご存知だと思います。そして、その技術革新のおかげで、super表記などの繊細な生地はより細く、よりエレガンスに美しくなっています。
一方で、昔ながらの仕立ての雰囲気をだすため、太目の糸で織ったり、昔の織り方どうりに復刻した生地も出来ています。

ですが、やはり”ヌメリ感”のあり、風合いのある生地を求めるならば、(高速以前の織機をつかった)本物の年代物が、柔らかに仕立て栄えすると感じます。
また、特にクラッシックな縫製方法で手縫いを多様する仕立て方の場合、後者がとてもしっくりきます。もともと、100年以上前の形に、縫い方も副資材もたいして変わっていないのですから、相性が良いのも当然かもしれません。

年代物の生地を使い、手縫いを多用し、重たいアイロンで時間をかけて仕上げるものは、現在のスーツとは一線をきす一つの価値観があると思います。

一方、生地は年月ごとに生地が含む油が抜けていくと言われますが、そのうん年前の生地と、復刻された生地を比べても、明らかにうん年前のもののほうが感じがよく、柔らかにハリがあると感じます。
弊店でも、年代物の生地が数点、一着分限りで御座います。今後、順にご紹介致します。

まずは、一点。



Tallia di delfino のWool&Cashmere、1980年代につくられたと思われる生地です。現在では、super生地などの細いウーステッドを得意とするタリアも、古いものにこのように風合いある生地が残っていました。現物一点限りです。
 
一枚目の写真と同じ品質の生地なので、同様の雰囲気で仕立て上がるはずです。店頭で御覧くださいませ。


2011/08/11

仕立て屋が作るオーダーメイドシャツ「作り」2

今週から久々に真夏の日差しが戻って参りましたね。やっと夏本番です。これからしばらく猛暑日が続くとの事ですので皆様体調管理には十分お気をつけください。

さてそれでは、前回より引き続き、今回は「作り」についてPart2ということで衿、袖について詳しくご説明させていただきたく思います。

早速ですがまず、衿を作るには前回ご説明したフラシ芯を衿の中に挟み込まなくてはなりません。
この工程の際に糊を使用して上衿にくっつけてしまえば大変楽なわけですが、イプシロンでは糊は一切使用いたしません。
ですので、上襟と芯をしつけで仮止めします。(仮ですので後ではずします)

その後、生地の表と表を内側にし て縫い合わせていくのですが、この際に、芯だけを出来上がりのラインに先に切りそろえてから縫い合わせていく方法もございます。
が、弊社の場合はそのまま仮 止めした表生地に合わせて切りそろえます。
そのため芯も縫い代付きとなります。


その後、2枚の生地(上襟、下衿)を縫い合わせます。
その理由としては出来上がりのラインで縫い合わせる際に芯も一緒に縫いあわせたほうが、ずれずにしっかりとまるからです。
勿論、表にひっくり返してからステッチを入れますのでそれでもしっかりとめつけられますが、その際に上襟と芯が動くのを防止するためで もあります。

ただ、弊社でも台衿と身頃の縫い合わせ、カフスと袖口の縫い合わせに関しましては芯を出来上がりのラインでカットし、縫い合わせます。理由は、縫い代自体が厚くなってしまうのを防ぐためです。


※洋服の作り方自体、何が良く、何が悪いのかなどの正解不正解はございません。ただそれぞれのことに対しそれぞれの理由と考え方があるということです。

縫い合わせた後は基本的にだんざらいをします。だんざらいとは片方の縫い代をカットすることです。例えば5mmの縫い代で縫い合わせた場合、片方の縫い代を 2mmカットします。そうすることで縫い代同士に2mmの差(片方は5mm、もう片方は3mm)ができひっくり返したときに段差ができづらくなるのです。
まただんざらいすることで、あたりが出るのを防ぐ効果もあります。




続いては袖付けです。
一般的なシャツの袖は、脇の裾の縫い目から袖先まで一気に縫い上げます。
弊社では先に身頃と袖を作り最後に合体させる後づけの方法で袖をつけています。

よく雑誌等では、身頃に対し袖を少し前につけること(ずらすこと)により腕が前に動かしやすくなると言っていますが、はっきり言ってあまり関係はありません。
また、後付けし、1.5cmほど袖を前に振ったからといって着心地がよくなる訳でもありません。
単純に、うちではわざと縫い目をずらして袖は後から付けましたよ、という証明にすぎません。


※ただ、一速縫いと後付けとで型紙が変わる場合は着心地は勿論変わってきます。

ブランドによっては身頃のアームホールに対し袖の寸法を少し大きめにして全体に『いせる』ということを行い、袖をふわっとつけている(ジャケットの袖付けと同じ考え方)ところもございますが、弊社ではそういったこともせず同寸法で縫い合わせます。

そして、ここからがみそですが、袖をつける前に弊社では必ず「しつけ」を します。このしつけがかなり重要なポイントなのです。
縫い代同士をあわせて、一番身頃と袖がしっくりくる位置を手で確認しながら、実際に縫う位置を「しつけ」ていくことで、その後ミシンで縫い合わせてもずれることなくなだらかで無理の無いきれいなカーブで縫い合わすことが出来ます。


勿論、しつけた状態でボディに着せれば身頃と袖のバランスを見ることが出来ますし、袖のギャザー分量等も確認することが出来ます。

しつける工程を入れることで袖の雰囲気は全く変わってきます。

その他、衿を作る際にはくせ取りを行ったり、カフスを作るときには芯と表地がなじみやすくするためにある方法を行ったりと
まだまだ色々と表からは見えない工程がございますが、そのあたりは企業秘密とさせてください。

ただ、洋服とはこういった一つ一つの手間を惜しまず作っていくことで全く違った表情となります。そういったことが物づくりに対して、非常に重要だと私たちは考えております。


2011/08/04

仕立て屋が作るオーダーメイドシャツ「作り」1

前回の、「補正」よりだいぶ時間がたってしまいましたが、今回はイプシロンシャツの「作り」について、詳しくご紹介させていただきます。




今年はスーパークールビズの影響もあってか、かなりの数のシャツの注文を頂いておりました。(ご注文下さったお客様、ありがとうございます。)
そのため、ここ3ヶ月ほどはひたすらシャツを縫い上げておりましたので、なかなかブログにて「作り」を更新する時間がございませんでした。大変申し訳ございません。

では早速シャツの作りについてご説明させていただきます。


まず、良いシャツとはいったいどんなシャツなのでしょうか?
今、市場では海外の有名ブランドの生地や、番手の細い~双の生地だからなど…、一般的に言われている高級(高い)生地でシャツをオーダーする=高級という感覚ばかりが先行して、作りについてはあまり触れていない店が多い気がいたします。

勿論、高級な生地を使用すれば着心地もよくなりますし、見た目もさらっとした印象になりますが、作りをこだわらず手を抜いてしまうとせっかく生地がよくても台無しになってしまいます。

イプシロンが考える良い作りのシャツとは、
まず、しっかりお客様の身体にあった型紙作成。
もうひとつは、糊をいっさい使用しないソフトな作りを基本とし、表面的に見てもドレッシーな印象を与え、それをミシンと手で丁寧に縫い上げることで表現したふわっと軽いシャツです。


それでは、どこが他と異なるのかと申しますと、まずは縫い代と縫い目です。


一般的なシャツの縫い代幅は5mm以上に対し弊社では2.5~3mmで縫っております。
これは見た目の理由ですが、細ければ細いほど仕上がったときにドレッシーな印象となります。
またその縫い代を驚くほど細かいピッチ(縫い目)で縫うのです。
これには理由は2つあり、1つは縫い代と同じくピッチを細かくすれば細かくするほどエレガントな仕上がりとなるためです。
そして、もう1つの理由は、縫い目自体が丈夫になるためです。


ただ、これを普通の糸(一般的な糸の細さは60番糸)で縫ってしまうと縫い目が固くなってしまい逆効果となってしまいます。

イプシロンではイタリアから持ち込んでいる100番糸のかなり細い糸を使用しております。
そのため縫い目は固くならずに、縫い上げていくことでシャツ地と一体化していきます。
縫い目、縫い代を細く細かくするとそれだけ手間もかかりますし技術も必要となりますがそういったことを一つ一つ妥協せずに作ってゆくことがうちのポリシーでもあります。


続いては芯地について。
まず芯とは、生地を安定させたり、しっかりさせたりするために使用する、生地と生地の間に挟むものです。(一般的なシャツでは 衿、台衿、カフスに使用いたします。)
現在、ほとんどのブランドのシャツが、接着芯といって芯自体に糊がついているものを使用しています。
接着芯は縫製しやすく、手間もかからない、さらには出来上がりもきれいに見えるという消費者側というより製造者側の大量生産を目的としています。

それに対してイプシロンで使う芯は綿100%のフラシ芯を使用しております。
最近では綿100%のフラシ芯はかなり少なくなってしまい、ポリエステル混合の物がほとんどです。
一般的なイメージでは綿100%のほうが縮みそうですが、ポリエステル混合のもののほうが製品後、どちらかというと縮みやすいです。
また、弊社のシャツ地は100%天然繊維のもののみ取り扱っていますので、芯も綿100%でというこだわりもございます。またそのほうがなじみも良いです。

種類は、薄いものと厚いものの2種類がございます。基本的に指定が無ければ、薄い生地には薄い芯を、厚い生地には厚い芯を使用いたします。(近々、芯のサンプルもご用意する予定です)
この理由については説明申し上げますとかなりマニアックな話になりますので省略いたします。※勿論薄い生地に対し厚い 芯地がご希望であればその指定で作らせていただきます。

芯は一度洗いをかけて縮ませ柔らかくしてから使用します。フラシ芯を使用する理由は仕上がったときに接着芯とは全く異なった柔らかい印象となるからです。


フラシ芯の特徴は、表地、芯、内側の生地がそれぞれくっつかないため、無理が無く作りとしても、出来上がりの状態としても一番自然です。

接着芯を使用すれば(表地とくっつけてしまうわけですから)シワにもならずピシッとします。また見た目もきれいですし、カチっとした印象となります。
そういったものがお好みのお客様にはうちのシャツはあまりオススメできません。


イプシロンのシャツの特徴は、いい意味で新品の状態でも古着っぽく、身体になじみやすいのが特徴です。

続いては、衿の作り方、つけ方と言いたいところですが….今回はこのあたりで続きはまた次回その②にて近日中に詳しくご説明させていただきます。





2011/07/24

背中の型紙

本日は、補正について少しお話したいと思います。


背中部分(後身頃)半身型紙の写真です。
型紙は、お店それぞれによって多少の違いはありますが、おおまかな形としては同じようなものです。

そして、下写真の様に、実際の生地に型紙をのせしつけ糸で印(キリビ)をうつのです。緑の糸ならばその線が背中の首周り~肩線~アームホールとなるわけです。


これは、船橋が数年前に、仮縫い状態で置いておいた生地を、今改めて線を引きなおしたものです。
ただ、ここで見ていただきたいのは、同じ人間の肩の線がいくつもある様に、採寸時に想定した肩の角度・背の長さは、仮縫い・中縫いの体型補正によって様々かわるということです。

反身・屈伸・いかり肩・前肩・なで肩・肩甲骨の張り・胸部の張りなどが、人それぞれ違うことに加え、前身頃に対しての、後身頃のバランスや角度が異なることで線は大きく変わります。

それほど、角度と長さは簡単には決まりません。ですから仮縫いが必要不可欠なのです。

スーツにおいて、「手縫いだから」という”縫い”のどうこうよりも、この補正方法がとても大切なのです。

それが、着心地を大きく左右します。


2011/07/23

ミラノからの手紙

本日、ミラノにいる船橋より皆様へ、暑中見舞いが届きました。

「ミラノから暑中お見舞い申し上げます。
こちらの朝は16℃くらいで半袖だと肌寒いくらいですが、とても過しやすいです。日中でも湿度はそんなに高くなりません。ミラノに着いた翌日はまず、スパゲティ・ポモドーロ・バジリコを食べ、自分の胃にイタリアにいる事を伝えます。

市内のショップは日本同様セールに入っており、有名ブランドはすでに秋冬物が並んでいるか、店舗改装中が目立ちます。イタリアは現在まさにバカンスの真っ只中で、街行く人の数も少ないです。

ちなみに学校は6月から9月まで3ヶ月の長期夏休みとなります。そこで大変なのは親たちです。70年代、子供の誘拐事件が問題になったイタリアで は、中学まで子供たちの送り迎えは当たり前で、遊ぶのも親の係りでした。この3ヶ月のバカンスが親たちにとってどのように大変か、想像がつくかと思います。

イタリアの人々のバカンスは最低2週間は必要です。1週間くらいだと、身体が休みモードにならないのです。地中海の海辺に寝そべり、夕方時間が止まったような空間の中で、その時、身も心も安らぎを感じるのです。この感覚を得る事が、バカンスを取る必要性なのかもしれませんね。
26日に東京に戻ります。27日には早速お客様とのお約束もあり、今は仕事オンのスイッチを入れ始めております。

私が作るイプシロンの洋服には、イタリアの文化がたくさん詰まっております。そして、そんなイプシロンの服を、多くの方々に体感していただきたいと思っております。

是非一度お試しくださいませ。
皆様のご来店を東京でお待ち致しております。

では、熱中症など、体調にはくれぐれもお気をつけください。


ミラノより 船橋 幸彦



2011/07/18

イタリア出張のお知らせ

7月19日(火)~26日(火)の1週間、代表の船橋がイタリアへ出張のため、不在となります。

店頭は通常通り営業しておりますが、船橋へのアポイントメントをご予定の方は恐れ入りますが、27日(水)以降にお願いを申し上げます。

前回2月の出張より約半年ぶりの帰省です。
前回同様、本場イタリアから新たな風を持って帰ってきてくれる事と思います。

船橋が帰国いたしましたら、またこちらでもお伝えいたします。



2011/06/28

甘く優しい針づかい

本日、あるお客様が、約5年ぶりにご来店されご注文いただきました。 
そのお客様の着ていた服が、とても意味深げに感じられたので、私の所感を書かせていただきます。

着ておられたジャケットは、内ポケットのタグを拝見したところ「2004」年につくられたイプシロンの手縫いのものでした。
以前、船橋がミラノにおり、日本にトランクショーをしていたときに数着つくって頂いたそうで、その後日本で本格的に店を構えたと聞き、わざわざ立ち寄っていただきました。
そして、約7年たったその服を、その方はとてもきれいに着てらっしゃいました。
生地もきれいであることと同時に、全体の柔らかな雰囲気が動きの中で表れ、その方の哀愁と共にとても“粋”に感じられました。

お客様がおっしゃるには、そのジャケットは「軽く、着やすいので、遠出する際など選ぶ。楽だから。」
また、「初めにつくった服の内側の糸が切れたので、直してほしい。近所のベテランの直し屋さんに持っていったら、こうゆうつくりのものは生地の風合いを殺さないために手縫いで甘く優しく縫っていると言われた。」そうです。

それを聞き、私は「そうだ。やっぱりすごい。」と改めて思いました。服や、歴史や、人の知恵や、積み上げてきた技法や、美的感覚や。その深さを改めて。
なぜ見返しを一針一針手で縫い合わせていくのか、なぜ何度もアイロンで馴染ませていくのか。つくりの技法には感覚的な意味がある。

服に限らずとも、無論設計図である型紙は大事なものだが、センチで計るデザイン、ディティールだけでは完成しえない、“手が感じる、つくる”物の形には、一言では表現しづらい感動があるはず。と。実際に目の前に現されたその服を見て、ただそう感じました。


2011/06/12

この原発事故に一言

福島原発炉心溶融事故により被災された方々には本当にお気の毒で言葉がありません。

最近、この人災と言われる原発問題への対応で、現在の日本政治の姿が浮き彫りにされてきました。各党、各政治家の思惑と絡みによって政策が決まらない。首相がそれぞれの思惑でつぎつぎと引きずり降ろされる現状。

この国は大丈夫だろうか。危機感を感じます。

今、我々はこれらのことを真剣に考え、意識改革を始める時ではないかと思います。
一例ですが、イタリアは1980年代に国民投票により原発を廃止しました。

これは結果論かもしれませんが、一票で決めた事がもし間違ったとしたら、我々自身に反省が生じ前進するが、一部の人々で決められたことが間違えると批判と責任転換が生まれ混乱となるのです。

大事な懸案は政治家にゆだねるのではなく、我々の一票が生かされるように変えていくことが真の民意を反映できるのではないかと思います。

このことにより我々に大事な一票の責任が生じてきます。

戦後日本に沢山の諸問題が生じてきたのはこの責任拒否が原因と言っても過言ではないように感じます。これから、この責任の道筋をしっかりとつくっていくことが、子供たちに対する大人としての義務ではないでしょうか。
このまま子供達が今の環境で時を過ごしていくと、何の疑問や考えも無く流されていくことが目に浮かびます。

自分の中で、何が正しく、そうでないか、まず大人が考える姿勢を子供たちに教えていくべきだと考えます。それがこの事故からの教訓ではないかと。

最近の事故対応に対して、思うところがありましたのでブログに書かせていただきました。失礼致しました。



船橋 幸彦


2011/06/11

サルトリアイプシロン ミラノのジャケット

船橋私物のジャケットです。

生地ブランドは不明ですが、S/Sのモヘア混紡ウール地で、ハリ感、コシのある生地です。こちらは以前、ミラノ時代の職人さんが縫ったものです。

衿、ラペルの雰囲気、腰の丸みなど手縫いらしい柔らかな立体感が出ているかと思います。
クラシックな形、シルエットは、時が過ぎても決して色褪せる(飽きる)ことはありません。





2011/05/24

時にはシックな色使いで ドーメル トニック

DRMEUIL TONIK2000


チャコールグレーのスーツ × 白シャツ × ダークネイビーのドットタイ。

夏は一般的に淡い色使いや軽い素材などで涼しく見えるようなコーディネートが主流ですが、時にはこういったモノトーン色で渋くまとめてみるのもいかがでしょうか?
貝ボタン(黒蝶)にするなど、小物使いで重たい印象となることはありません。


現在の在庫は残り3着のみとなっておりますが、無地とシャドーストライプなのでどれもあわせやすく、着まわしのきくお色です。
また、トニック 2000(モヘア)は春夏に適した素材として有名ですが、繊維自体ところどころ中空になっているため、温度の伝導を遮断し、冬は暖かく、夏は涼しい効果を もたらしてくれますので3シーズン着用可能です。

一着持っていても間違いないかと思います。



2011/05/21

モヘア 100% 全8色入りました

お客様の、ご要望によりモヘア100%の生地サンプルが届きました。

 二種類の重さのもので、ブラック、ネイビー、チャコールグレー、ミディアムグレー、ライトグレーなど全8色をご用意しています。

 モヘヤとは、アンゴラヤギの毛で光沢をもち、通気性がよい、腰の強い毛を使った織物です。 通常、モヘアにはクリンプといわれる毛のうろこが少なく、その腰の強さのため、現在の高速織機では生産されにくいと言われています。
ゆえに、モヘアを使った生地で、混合率の多いものでもモヘア60%ウール40%や、モヘア16%ウール84%などの様に”つなぎ”をウールと混ぜるようです。

 しかし、今回の生地はMohair100%は正真正銘のアンゴラヤギ100%です。
それは、より低速織機を使うことで、生地に負担を少なく織ることが可能なため出来上がった逸品です。まさに機屋さんの技術の賜物です。 これは毎年出てくる生地とは限りません。一見の価値ありです。



とても仕立て映えしました。生地の強さからもこれは一生物だと言えます。


2011/05/04

HARRISONS(ハリソンズ)

スコットランドの老舗生地ブランド、HARRISONS OF EDINBURGHのバンチが数種類入荷致しました。



「CAPE KID」

キッドモヘア60% × super 100's wool 40%
モヘア独特の光沢感と清涼感が、これからの梅雨時期から最適な生地です。


MYSTIQUE」

wool100% 2PLY
厳選されたメリノウールを使用した2PLYの春夏生地です。

シワになりにくいのはもちろん、軽めなのにコシもしっかりあり、上質な生地だとすぐ分かります。



「MERSOLAIR」

100% pure LINEN & 100%cotton他
リネン100%やリネン×モヘア、コットン100%などの入ったシリーズです。
色味が非常に鮮やか&爽やかで、夏到来!な感じです。


「FRONTIER」

ハリ、コシの強さが特徴の生地です。目方も300gと打ちこみがしっかりして、仕立て栄え抜群です。

季節的には春~秋の3シーズン対応です。色柄もストライプ、無地、ウインドペンなど、ベーシックでかっこいいです。価格的にもオススメです。