2014/07/02

アトリエ移転のご案内

この度、サルトリア・イプシロンは独自のアトリエを日本橋の地(後記住所)に移転・新設することになりました。 

2009年9月に株式会社三越伊勢丹に招聘され、三越日本橋本店2階にアトリエを開いてから早くも5年が経過しようとしています。この間に、活動拠点をミラノから順次日本橋に移し、弟子の育成やアトリエの経営に邁進してまいりました。それは今回のアトリエ開設に向けた準備の期間でもあったと言えます。
そうしてやっと此度の、かねてより私自身が提唱してきている「ネオルネッサンスを生きる洋服屋」としての仕事の仕上げに向けた第一歩を踏み出すことになったのです。 

思い返せば38年前、ロンドンでの修行からスタートし、その後ローマへ渡り、甘く優しい手縫いの服つくりに感動してからというもの、一人ひとり体型の異なった人々に着せ付けることの難しさに立ちすくみつつも、ローマの石畳を歩きながら密かに抱き続けてきた理想のスーツへの挑戦と、その成果としての解決策を提示するためにです。

 その方策の一つが、経糸と緯糸が釣り合った、重力を味方につけた服でした。それはストレスを感じさせない着心地を実現し、身体を無理なく絶妙なフィット感で包み込むため、そこには自ずから着ている方のオーラも漂い、着こなしの美が生まれ出てくるのです。

この発見以降、私の服つくりの究極の目標として、理想と夢に懸けた人生が始まったのです。
ですから此度のアトリエ開設は、私自身にとっても弟子たちに承継されるアトリエの将来の機能と役割を見据えても、先ずはやらなければならない事でした。 この第一歩が踏み出せたことを、夢の実現に向けた着実な進歩として自覚すると共にこれまでの皆様方の多大なる御愛顧には書中も持って感謝申し上げる次第です。

この上は、頑固一徹にスーツの本当の着心地の良さを目指した「ネオルネンサンスを生きる洋服屋」への皆様からの暖かいご支援を賜りながら、究極の服つくりの原理原則を広く世の中に普及させることに人生の限りを尽くしていきたいと考えております。 

新設アトリエには、Sala di Prova(フィッテングルーム)、とlaboratorio(工房)の二つの機能を備えております。これは私が提唱するバランスのための仕立て技術である「やじろべえ」を実演、確認するためのものです。

 Sala di Prova では仮縫いをビデオ映像として視覚化し、その補正をlaboratorioで素早く組み立てなおし、ご自身の最終ラインをご覧いただけるような工夫も凝らしておりますので、ご期待ください。 
また、お近くにお出かけの折には是非ともお立ち寄りください。 

なお、日本橋三越内の工房での活動は7月14日をもちまして終了いたします。
新設アトリエのオープニングの8月3日までは準備期間のため、休業とさせていただきます。
休業期間はメールまたは電話にて対応させていただきますので宜しくお願い申し上げます。


(新設アトリエ)〒103-0023 東京都中央区日本橋本町4-7-1 イマスHKビル5F-B 
(TEL) 03-6225-2257 
(FAX)03-6225-2258 
(OPEN) 2014年8月4日(月) 10:00〜19:30

※ご来店の際は、必ず事前にお電話かメールでのご連絡をお願い致します。

[JR] 総武本線「新日本橋駅」より約2分 / 山手線・中央線「神田駅」東口より約6分
[ 地下鉄 ] 銀座線「三越前駅」室町三丁目方面改札より約5分 / 半蔵門線「三越前駅」日本橋方面改札より約9分

※車でお越しの際は、誠に恐れ入りますが、お近くのコインパーキングをご利用下さい。



2014/06/19

パンツの仮縫い 補正について

ご注文頂いたパンツの仮縫いのお写真です。


デザインは、クラシックなワンタックです。
センターラインはまっすぐ落ちていますが、補正で若干内側にいれます。


パンツは腰の位置に注意しなければなりません。(ほとんどのお客様は、腰の位置が対称ではありません)写真では、すでにピンでとめておりますが、左に対し、右の型紙を変えなければなりません。
サルトリアイプシロンでは、左右で型紙を変えることは当たり前のことです。

既製服とは、服のサイズに人が身体をあわせます。
オーダーメイドとは、人の身体に服をあわせます。
既製服とオーダーメイドでは、根本的に考え方が異なります。

当然、オーダーメイドの方が見た目は美しく、着心地のよい服が出来上がります。



2014/03/02

CERRUTI ジャケットのお仕立て上がり

ご注文ジャケットのお仕立て上がりです。
生地はチェルッティ 2013A/W ジャケットバンチより、お選び頂きました。


主張しすぎないチェック柄はセンス良さを感じさせ、太めのラペルが凛々しい印象を与えます。バルカポケットは、チェック柄であってもしっかり柄を通すことで目立ちすぎることはありません。
さらに、立体的に作っておりますので胸のボリュームは保たれています。


後ろ姿もきれいです。首、肩周りには無駄なシワは一切ございません。
チェック柄が横にしっかりと通っているということは、前後のバランスが合っている証拠です。

毎シーズンご注文いただいておりますので、H様のお好みは大体把握しております。
仕立ての柔らかさ、自然なシワ感はそのままに、きちんと体を包み込む立体的な作り方をしております。

現在も夏物のジャケットをご注文いただき製作中で、こちらも生地がかっこよく、相当良いものに出来上がりそうです。



2014/02/24

アパレル工業新聞 掲載のご案内

この度、代表の船橋がアパレル工業新聞のコラム「服作りを生きる」に、掲載されました。




2014/01/24

007ジェームズボンド デザインコート

お客様のご要望で、特別なデザインのコートが仕立て上がりました。

葛利毛織社 ‘DOMINX wool 100%’
カシミヤのような光沢があり、低速織機で時間をかけて織った国産最高峰の生地で仕立てました。
形は、映画007にてジェームズ・ボンドが着用していたダブルのコートです。
シックな雰囲気のスタンドカラーが特徴的です。


ボタンを閉めればしっかりと防寒の効果をはたします。とてもシックな印象です。


ボタンを開けますと、また違った雰囲気となり、コーディネートの幅が広がります。


後ろからのシルエットも美しく、ドレープもしっかりでています。
肩周りに無駄なシワはございません。これは、しっかりと前後のバランスがとれている証拠です。

低速織機で織り上あげた生地は、普通の生地以上に丈夫です。
体型さえ維持していただければ、何十年も着ていただけるはずです。


2014/01/02

服作りについて私が考えること

新年あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

さっそくではございますが、新年の目標と題しまして、私が今後実現していきたいことを、常に忘れないよう、以下項目にまとめてみたいと思います。

・服造りの要点であるバランスのとり方に関する技術の普及
これは「やじろべえ」としての理論をほぼ完成し世界特許を申請しました。
特許申請してますが、決して技術を排他的に独占する為とかではなく、私の秘伝?として秘匿し続けたりもせず広く世に知らしめて、普及、活用に道を開くためのものです。

・「アカデミア」の開講
ここで育成の主眼とすることは、フィティング技術者の養成です。現状の販売分野で最も欠けているのが、オーダー服の採寸、フィティング技術の熟度です。これを前記の「やじろべえ」に基本を置いた手法に則って「オーダー職人」を育成していくものです。
更に、このアカデミア構想の課題として私の持つ縫製技術の伝承を企図したところで「縫製職人」を育成していく考えです。これは、アトリエ運営との両輪として実現を図りたく思います。

・服造りの流儀
ここでは服造りに関する私自身のこだわりや哲学のようなものを、これまでの実体験を交えて解説し、対顧客対応を出発点としたビスポークテーラーへの道のよ うなものを伝えたいと考えます。服造りの基本が手縫いにありその上でマシン縫製を学ぶことの正統性や顧客価値を高めるための論理と手順などを伝えられたら、と思います。

・素材へのこだわり
これまで縫製の難しさから敬遠されてきた素材にも積極的に取り組み、カシミヤ、シルクなどをこれまで以上に服造りに活用していく技術とデザインを開発していく考えです。また、昨今の仕立て技術、素材の導入で芯地の扱い、性能向上が言われていますが、これも生産効率や出来栄え優先したところに行き着いてしまい、手段と目的が入替わっているように思います。この辺りも自信をもって見直し、改善を図っていきたいと考えます。


以上が私が思い描く、理想の未来へのイメージです。


2013/12/24

Buon natale!



来年の干支は午。

私は幼少のころから馬との縁があり、長崎くんち(長崎市の諏訪神社の祭礼)の時にも馬にまたがり町中を練り歩いたことを覚えています。それ以来馬が好きになり、映画やテレビで馬の映像を見ただけでもう目が釘付けになってしまうのです。
実は馬が好きというだけで乗馬など出来もしないのに16歳の時には無謀にも乗馬ブーツを注文し、自分の騎乗した姿にあこがれていたものです。

23歳でロンドンに渡航した折には、彼の地で使うつもりでこのブーツを持参したものです。ところが、中々その機会に恵まれないまま一年程でローマに移ることになり、更に3年が経ち欧州での暮らしにも慣れた頃に、ようやくローマ観光で有名なアピア街道沿いにとある乗馬クラブを見つけ通い始めることになりました。これが私の乗馬ライフの始まりです。

遠乗りの際には、古代ローマ時代からのアピアの遺跡を仲間と巡り、ジュリアス・シーザーも眺めたであろう夕焼けの景色の中に我が身をおいて、馬上のローマ騎兵の気分で悦に入ってました。

1985年頃からは自分のアトリエでの仕立て仕事も忙しくなり、乗馬クラブから足が遠のいていた時期もありありましたが、1995年にミラノに移り5年が経ち仕事の方も軌道にのった頃から無性に馬が恋しくなり再び乗馬クラブに通い始めました。
イタリアの馬術競技では障害物越えが盛んで、ひたすらに跳ぶ事ばかり楽しんでいました。

2004年にはいささか調子にのり過ぎて跳躍後に振り落とされ、腰の3番の骨を骨折して、ベットに2週間寝たきりの入院生活を余儀なくされたこともありました。
その後、40日間ものギプスをはめたままの生活は結構不自由なものでしたが、それから1年間程はリハビリを兼ねて水泳に励み、どうにか健康体を取り戻すことが出来ました。

この落馬事故がトラウマになるかと懸念したのもつかの間、やはり好きな馬とは離れられずに乗馬を再開。それからも、障害物跳躍後の馬の暴走を2度ほど経験しましたが、怪我の方は大したこともなく今日に至っております。

2009年に日本橋にアトリエを構えた後、東京の生活にも慣れた翌年の春には早くも乗馬のことが頭をよぎる様になりました。決して時間を持て余していたわけでなく、むしろ気ぜわしい毎日だからこそ、馬との交流の日々が忘れ難く、東京でも乗馬ライフを再開しました。
日本では馬場馬術を習得しようと決めてましたが、イタリアとは馬の様子が違うのには戸惑いました。

馬が全然動かないのです。
フェラーリの国の馬が暴走するのは、なんとなく納得できますが、日本の馬の気性が理解できていない自分に気付き、基本から取り組むことにしました。運転免許の取り直しです。

幸いオリンピックに出場した法華津さんのアシスタントもされた方から上手な指導を受けることが出来、お蔭様でその後の乗馬ライフがとても楽しいものなりました。
その乗馬クラブでは、一日一回馬を放してストレスなく飼育しているため扱いやすいということも知りました。
馬の飼い方にもお国柄があるようで、フェラーリにはそれなりの事情があり運転技術が必要と言うことで、これにも納得した次第です。
先日は初めて大会出場を果たしました。自前の乗馬ジャケットを着けての出場です。

私は服のフィッテング時には必ず椅子に座って戴きます。その時にバランスのとれているジャケットは肩廻りに皺も出ず、見た目も綺麗で着心地もいいのです。フロント釦も無理なく止まります。
これが「やじろべえ」の理論なのです。

この写真はJEF馬場馬術競技A2課目2013を受けた時のものです。自前のジャケットのせいもあってか結果は銅賞でした。
手前味噌ですが、乗馬からは学ぶことが多く、これからも精進し人馬一体の競技の興味を人服一体の仕立て仕事に生かし、エルメスが馬の鞍なら私は乗馬服をしてヨーロッパ伝統の競技とそのエレガントな装いにこれからも挑んでいこうと思います。


船橋幸彦