私が、織元の「東邦シルク」〔現・(株)デルタ・プロジェクト)代表小林剛さんと出会ったのは、2010年秋頃でした。
彼は、山梨で織元としてネクタイやスカーフなどに力を入れているメーカーで、二代目として大企業から転職し家業を継ぐことになった経緯もお聞きしました。
かつて彼のお父様はネクタイ地の織元として成功され後、将来を見据え日本で最後の低速織機を買い揃えたそうです。
以前「織機の違い」についてお話したように、生地を広げて見たとき、高速織機で織られた生地は地の目が傾斜し歪んでいます。
(それをアイロンで整え
ようにもゆがみは一時的にしか直りません。)それは生産効率を上げるための進化のように思われます。
一方、効率の悪い低速・中速織機で織られたものは、
縦・横の地の目が90度で通ります。
数年後もゆがみが少なく“長く着られる”生地と言えます。
洋服をつくる者にとっても、地の目が左右きっちり揃っていることはとても重要なことです。
普段弟子に「地の目がみえづらい無地の生地こそ特に気をつけるように。」と言っております。
イタリアにいる頃、生地メーカーに対し地の目の歪んでいる製品にクレームを入れたこともあります。
ですが、現在世界中の生地メーカーが高速機械で織っています。
イタリア、イギリス、アイルランドにて、実態をこの目でみてきました。
その上で、今や低速織機は世界の宝だと私は思います。
ですから、私は小林さんに、
「これから、真のグローバルために世界に通ずるMade in
Japanのものづくりをしなければ大成出来ません。」
「この宝を生かすも殺すも貴男次第です。お互い真のグローバルの生き方のお手本を世界に見せようじゃありませんか。」と私の抱いている夢を語りました。
その上で「例えばイタリア・カルロリーバ社のような品質の物を作ってほしい。」とサンプルを持ち、
山梨の工場まで出かけました。
そしてその後、小林さんが試行錯誤を繰り返し研究し、“この宝物“を生かして出来上がった第一作が、この麻60%綿40%のシャツ地です。『Made in Japanの確かな品質に、軽く肌触りの良いファブリックデザイン』の洋服を皆様にご紹介致します。
船橋 幸彦