2021/02/15

PALTO' パルトーフェア

久しぶりのブログです。

現在サルトリア・イプシロンではパルトーフェアを開催しております。

パルトーとはイタリア語でコートの事で、元はフランス語のPaletot(外套)からきております。Paletotはダブルのコート全般を言うようですが、古い言葉らしく今ではあまり使われておりません。
今回は敢えてコート=パルトーと言い換えております。では、なぜ敢えて古い言葉を使い、更にシーズンが過ぎようとしている今時期にフェアをするのか、以下に代表の船橋の想いを綴りましたのでご覧下さい。

『ローマ修行時代の1977年頃、私の最初の恩師ニコラ・ペレグリーノ先生は冬場になるとよく「パルトー」という言葉を口にしていました。初めは何の事だろうと思っていたのですが、いわゆるコートの事を言っているのだとのちに理解しました。コートはイタリア語で Soprabito ソプラアビト や Cappptto カポット というのが一般的ですが、その時聞いたパルトーという言葉、発音の語感がなぜだかとても夢誘うものでした。
その当時イタリア人にとってコートを自分のサイズ、好きな形でオーダーするというのは彼らの身だしなみであり、一生大事に着る身体の一部のような衣服として存在していたように思います。

それから40年以上の時が過ぎ、温暖化や技術の進歩によって軽くて温かい衣料品が「アウター」の主役となりました。使い捨ての物に溢れている現代社会、物だけでなく人の心も同様になっているように感じます。そして、今回のコロナ禍において色々な制約を余儀なくされてしまった今、「自分のものを大切に使い生きる」文化はより一層私たちに共存の喜びを与えてくれ、人や物、環境全てを大切にする心が湧いてくるのではないでしょうか』

という船橋の想いの元、今だからこそ手のぬくもりのある一生物の”パルトー”を皆様に着ていただきたくフェアを開催する運びとなりました。

5月中旬頃までの御注文で今年の10月末に納品となりますので、来秋冬から御着用出来る様なスケジュールです。
まずはチェスターコート・ポロコート・ラグランコートをご提案致します。既にお持ちの方はスポルベリーノやローデンコート、ナポレオンカラーコートなどもおすすめです。

コートサンプルはこちら
シングルチェスターコート

ダブルチェスターコート

ウールギャバジン ラグランスポルベリーノ ケープ付き
※スポルベリーノとは「ホコリ除け」という意味で、軽く羽織れるコートの事です。

ケープを外すと普通のラグランステンカラ―です。


ドネガルツイードアルスターコート
(アルスターコートはドネガルツイードで作るのが本来との事です)

キャメルポロコート

レディース カシミアアルスターコート 

ローデンコート

この他、ナポレオンカラーコートなどもあります。

今回パルトーフェアを行うにあたり、船橋が昔蚤の市で購入した古い裁断書を見直してみました。
この裁断書は1949年に発刊されておりますが、12版目なので初版はもっと以前に発刊されています。
文中にはPalto'やPaletotという単語が随所に出てきます。
(ただ、同時にSoprabitoやCappottoも出てくるのでどう使い分けているのかいまいち分かりませんが、、、。)
この中に興味深い型紙がいくつかございましたのでご紹介致します。

まずはこちらです。

PALTO' TIPO SPORT

「パルトー ティーポ スポルト」とは、スポーツタイプのコートという意味です。
型紙を見ると分かるようにいわゆるポロコートで、このパルトーという言葉が題名に使われているのはこの型紙のみです。
サルトリアイプシロンのポロコートはこの形を踏襲しております。


LODEN
ローデンです。
しかし我々が現在知っているローデンコートとまるで違います。
文中には「袖無しケープ付きの首まで閉じたコート。昔一時期流行し、今は神父さんが使い、警備員や交通警察などのレインコートとしても使用されている」とあります。

そこで色々と分かる範囲で調べてみたところ、ローデンコートの起源はローデンケープのようです。
アルプス・チロル州の寒い気温と雨の多さを凌ぐ為に織られた布がローデンクロスであり、その布で作ったものを作業着として羊飼いや猟師たちが着ていたのがローデンケープです。16世紀にはすでに存在しており、ヨーロッパに広まっていったのは19世紀初頭からで、20世紀に入ると今の様なクラシックなコートとして確立されていきました。

これはかなり興味深いので、試しにサンプルをシーチングで作ってみました。
正面


背面

中の作り

見た目はインバネスコートですね。
昔の絵画やイラストではこのようなケープやマントを着ているのはよく見ます。(アルスターコートも最初期はケープが付いていたみたいです)
しかしこの形をローデングリーンの布地で仕立てるというのは今逆に新鮮かもしれません。
※ちなみに、1979年公開の「007 ムーンレイカー」の劇中で、適役のヒューゴ・ドラックスがボンドとハンティングをするシーンでローデングリーンのケープにチロリアンハットを被っていますので気になられた方はネットで検索してみて下さい。画像が出てきます。

その他にも多数のコートの型紙が掲載されております。

クラシックなシングルコート(チェスター)

レインコート

乗馬用コート

毛皮コート

この他にも裁断書にはまだまだコートの種類が載っているのですが、割愛させて頂きます。
しかしながら如何にコートというものに重きを置いているかというのが伺えますね。

軽く性能の良いアウターが安価で手に入る今、重い生地で仕立てるコートは時代に逆行しているように感じるかもしれません。
しかし、きちんと身体に合ったコートを着るとハイテク性能など簡単に凌駕する幸福感を得られます。そもそも着用すると一切重さを感じません。
また、一生着られる事を考えると今話題のサステナブルな物に一番近いように感じます。

どうぞこのフェアの機会に自分だけのコートを作られてみては如何でしょうか?

<パルトーフェア>
・御注文は5月中旬頃までの締め切りを予定しており、納品は10月末になります。
・店頭在庫のコート地など特別価格でお仕立て致します。
・御注文時に半金、納品時に残りのお支払いとなります。
・今回のフェアでの御注文はBuonoでのお仕立てのみですが、フロントとラペルのボタンホールは手縫いです。

価格等気になられた方はお気軽にお問い合わせください。
また、お越しになれない方にはこちらから伺う事やバンチをお送りする事も出来ますので、併せてお気軽にお問い合わせ下さいませ。

ヴェネト州(チロル州の隣)の農民のマント

サルトリアイプシロン Sartoria Ypsilon

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